辞書の選び方

英語学習に必須の辞書について-その賢い選び方

この20年ほどの間に良い辞書が次々に出版されました。

先陣を切ったのはイギリスの英英辞典で、それに続いて英和辞典が版を新しくしたり,名称が変わったり、全く新しい辞書も登場しました。

我々英語学習者にとってはとても喜ばしいことです。

また,新しい工夫も随所に見られ、辞書によって特徴が顕著になっているようです。

辞書出版社が一種の差別化を狙って特色を打ち出そうとしているように思われます。

それに比例して,様々な特徴ある辞書から自分に適切な辞書を選ぶのが難しくなっているのも事実です。

そこで辞書選びのお役に立てるような情報と選択基準を提供したいと思います。

辞書選びの基本知識としてお役立て下されば幸いです。

なお,説明の中に出てくる辞書名は私が使っているものに限っていますので,ここに出てくるものだけが「良い辞書」という訳ではありません。

english

1.辞書購入の大原則…辞書は新しければ新しいほど良い!

「辞書は新しいものほど良い」が原則です。

版が新しくなったということは,旧版の情報が古くなったり,不適切な部分があるなどの理由で改訂されたということです。

したがって,版が新しくなれば買い替えるのが鉄則です。

いやしくも英語を学習しようという者が辞書を購入するお金を惜しんではなりません。

版が新しくなる前に,普通は刷が何回か新しくなります。

これは「増刷する」ということですが,このときは植字ミス(typo)などを中心とした改訂が行われることがあります。

通常は車のマイナーチェンジ程度ですから買い替える必要はありません。

ご参考までに申し上げますと,辞書が改訂されるサイクルは,学習辞典の場合は日本車のフルモデルチェンジと同じで概ね5~7年ほどでした。

中辞典はドイツ車のサイクルと同じかそれ以上になるでしょう。

しかし,学習英和辞典に限って言うと,時代の流れが速くなっているということの現れと思われますが、一時期このサイクルは短くなる傾向が見てとれました。

ところが、最近はむしろ長くなっている辞書も珍しくはありません。(なぜでしょう?)

辞書購入の際には版と刷を確認して,その時点で一番新しいものを手に入れましょう。

新しい辞書で幸せになって下さい。(^.^)

dictionary

2.辞書の種類とその特徴

◆学習英和辞典

高校生以上が------英字新聞を読んだり論文を書くためなどの目的ではなく------英語そのものの学習のために使う辞書という私の定義の範囲内で説明します。

英語学習者のためにいろいろなきめの細かい配慮がなされています。

その配慮の仕方は出版社によって異なりますが,概ね下記のような特徴を備えています。

(a) 語 法(usage)&注意表記

いろいろな特徴の中でも特に重要なのが『語法』だと考えます。

文法は文の作り方に関するルールですが,語法は単語の使い方のルールと理解して下さい。

概して,語法の情報が多ければ多いほど我々学習者は助かります。

特に日本人特有の誤りやすい点について解説してあるものは本当に役に立つと思います。

ジーニアス英和辞典が語法に強いという定評があります。

この辞書が出版されてから辞書に載る語法の量が急に増えたような印象があります。

ジーニアス英和辞典の出版社である大修館は語法(大)辞典を昔から出していますので,語法に強いのも納得というところです。

ジーニアスの影響を受けたのか,研究社のライトハウス英和辞典も語法を多く取り入れ、その上位版といえる『ルミナス英和辞典』にも引き継がれました。

この両者に後続して出版された辞書もそれぞれ表記の仕方は違っても語法情報を多く載せています。

辞書選びの際には,興味のある辞書全てで同じ単語を引いてみて語法(内容と情報量)を比較してみることをお勧めします。

大きな選択基準の一つですから,大いに参考になるでしょう。

語法とは別に,「注意」としてちょっとした情報を載せている辞書もあります。

これは語法という枠組みでは捉えられないようなものを含めている場合が多いようです。

例えば,例示した用例に関わる諸々の注意,会話における音声面の注意などが扱われていることがあります。

(b) コロケーション(collocation)

コロケーションというのは語と語の慣用的に相性の良い結びつきのことと考えて下さい。

学習英和辞典に本格的なコロケーション情報を最初に取り入れたのは、初代ライトハウス英和辞典ではなかったか(?)と思いますが,今では多くの辞書に採用されています。

単語をいくら覚えても使い方を知らなければ正しく英文を書くことはできません。

能動的語彙(=使える語彙)を増やすためにはコロケーションを覚える必要があるのです。

このことに辞書出版社が気付き、コロケーション情報を載せるようになったのはとてもよい方向性だと思います。

さらに,「ルミナス英和辞典」のように、コロケーションという「囲み」を作って明記しているものが分かりやすくてよいでしょう。

辞書によっては遠慮がちに語義の後に簡潔に(  )に入れるだけの表記の仕方をしているものがありますが,これをコロケーション情報として読み取ることができる人はそれなりに力のある人でしょう。

辞書出版社に再検討をお願いしたいと思います。

このコロケーションだけを集めた辞典として研究社の「新編英和活用大辞典」があります。

頻繁に英語を書く必要性がある人にはお薦めの辞典です。

私は紙版もCD-ROM版も愛用していますが,約20年経っているので、版を新しくして欲しいというのが希望です。

(c) 日英比較情報

訳語だけでは分かりにくいような日本語と英語の意味あるいは用法の違い,また辞書によっては文化的な相違・和製英語に関わる注意などを扱っています。

大きな枠組みでは語法の中に含まれることもあります。

(d) 文化情報

英語を学ぶ上で英語圏の文化的背景を知ることはとても重要なことですが,その情報を載せてくれる辞書も増えてきました。

英和辞典から得る情報の中では副次的なものですが,理解をより深いものにするには必要な要素です。

今はオマケ的な色彩もありますので,将来的にはもっと質的にも量的にも本格的なものにしてほしいと願っています。

(e) 発音・アクセント情報

日本人が発音を間違えそうな単語に『発音注意』『アクセント注意』などの表記をしている辞書が増えたのは喜ばしいことです。

中には,赤色で印刷しているものもあります。

例えば,<purchase>などのように、「発音・アクセント」を間違いやすい単語については、その注意を促している辞書が望ましいと思います。

また,限定用法でアクセントの移動が生じる単語にはそれを表記している辞書もあります。

例えば,<He is Japanese.>と<He is a Japanese student.>では<Japanese>のアクセントの位置が変ることがあります。

ルミナス英和辞典ジーニアス英和辞典ではこういう注意も扱っています。

細かい点ですが,アメリカ式発音では<t>の音が<r>のようにしばしば発音されます。

ルミナス英和辞典では発音記号の<t>の下に<.>をつけることでそれを教えています。

音声面に興味のある人にはいずれもありがたい情報でしょう。

(f) 長所と欠点

学習英和辞典の欠点はなんと言っても語彙数および語義数が限られていることです。

英字新聞などを読むには力不足の感は否めません。

しかし,これを補って余りあるのが上記のような「読む」辞典としての情報量の多さです。

これに加えて基本語の用例の豊富さも忘れてはなりません。

そもそも1冊の辞書で全てをまかなうわけにはいきませんから,学習英和辞典の長所を積極的に評価すべきと考えます。

上級者といえども1冊は必要な辞書でしょう。

◆中 辞 典

辞書名に中辞典と銘打っているものを中辞典の定義とします。

学習英和辞典と較べると種類は限られます。

選択肢が少ないのが残念です。

名前は「中辞典」でも語彙数からして中辞典とは言い難いものもあります。

ジーニアス英和辞典やルミナス英和辞典と語彙数が同程度であれば,複数の辞書を持つことを前提に考えると,中辞典としての価値は低いように思われます。

読む辞典としての情報量は学習英和辞典に劣るのはその性質上当然のことでしょうが,その分,語彙数と語義数で優っています。

また,最近の傾向として語法の情報量も増えているようです。

語法以外でも学習英和辞典の良いところを取り入れています。

英字新聞を読むには語彙数と語義数の点で中辞典レベルの辞書が必要になります。

そういう意味で学習英和辞典を補うことができる中辞典を選択すべきでしょう。

そのためには使用している,あるいは購入予定の学習英和辞典の特徴を把握しておく必要があります。

私の好みは、小学館の「プログレッシブ英和中辞典」です。

◆大 辞 典

大辞典になるとさらに選択肢が少なくなります。

ほとんど無いというのが現状です。

一般の人がなかなか買わない大辞典に投資するのは難しいのでしょう。

自然と改訂のサイクルも長いです。

個人的な体験では,大辞典だからと言って特別な語義が載っているというようなことは少なく,中辞典では見出し語にない単語が載っているので助かることがある,という程度です。

正直なところ,私にとっては毎日引く辞書ではありません。

いわば,「保険」のような意味で保有しています。

気軽に利用するにはあまりにも物理的に重過ぎるのです。

大辞典のこの最大の欠点を払拭してくれるのがデジタル版です。

これからは有望な選択肢になるでしょう。

◆英 英 辞 典

一般の学習者向けの英英辞典に限定して説明します。

この分野では「オックスフォード現代英英辞典<OXFORD Advanced Learner’s Dictionary>」が草分けです。

現在に至るまで,私は学生時代より版を更新して使い続けていますので一番慣れている英英辞典です。

誰にでも抵抗感が無く使える辞典でしょう。

また,「コウビルド英英辞典」は語義を文で説明するという手法と採り入れています。

これも愛用の英英辞典です。

英英辞典は最初は難しく感じられますが,慣れてくるとそれほど苦にはならないものです。

外国人学習者に対する配慮として,限られた語彙で語義を説明してくれていますので実際に利用してみると使い難さはそれほど感じないのではないでしょうか。

英英辞典に慣れるコツは,使い始めたころに集中的に利用することです。

たまにしか引かないといつまで経っても「使い難い」という印象のままになり,結局は机の上のお飾りになってしまいます。

とにかく,ある一定期間は積極的に使ってみましょう。

「慣らし運転」期間中は,知っている語彙を中心に引いてみるのがコツで,早く慣れることができます。

英英辞典利用の最大の利点は「英語を英語で理解する」点にあると言えるでしょう。

日本語を介在させないので,ごく自然に<think in English>を実践することになります。

英和辞典の訳語からでは分からないその言葉の持つニュアンス,イメージなどがとても素直に理解できるようになります。

英語に対する感覚を身に付ける良い方法の一つではないかと考えます。

その反面,日本語にする必要があるときには適当な訳語が出てこなくて困るときがあります。

その時は,英和辞典を訳語を捜すために併用しましょう。

これが適材適所の辞書利用の仕方です。

3.辞書選びの判断基準

自分自身の判断基準を持つことがもっとも大切だと思います。

他の人の場合は分かりませんので,私自身の判断基準を紹介いたします。

それを参考にして頂いて,みなさんの判断基準を持たれるのがよろしいのではないでしょうか。

特に学習英和辞典を購入する場合は,『読む辞典』としての情報をどれほど備えているかが重要なポイントとなりますが,下記の判断基準もこれと重複する内容があることをあらかじめお断りしておきます。

辞書選択の際の私的『判断基準』を提案

(1)『読む辞典』としての情報をどれほど備えているか?

学習英和辞典では最も重要な選択基準の一つになるでしょう。

中辞典,大辞典と大きくなるにつれてこの種の情報量は少なくなりますが,それは辞書の性質が違いますので当然のことでしょう。

ただし,「プログレッシブ英和中辞典」のように中辞典にしては語法などの情報が豊富な辞書もあります。

(2)複数の辞書を持つ場合は同じ出版社の辞書は避ける!

出版社が同じだと,例えば,語法や用例がまったく同じということもよくあります。

どうしても自社の情報を最大限に利用しようとしますから,こういうことが起こるのでしょう。

特にシリーズものは要注意です。

研究社であれば,「ライトハウス」シリーズはルミナス英和辞典を頂点としていますが,その情報はルミナスの「量」を少なくしただけというのが印象です。

したがって,英語に関心のある中級レベル以上の人がこのシリーズのどれかを買うなら迷わず「ルミナス英和辞典」に決めるべきでしょう。

ジーニアスのシリーズについても同様のことが言えます。

小学館の「ラーナーズ・プログレッシブ英和辞典」も中辞典の縮小版のようなものです。

※同じ出版社のものでも,編集方針などがまったく違うものもありますので,その場合は同一出版社であることを気にしなくてもよいでしょう。

(3)用例の多いものを選ぶ!

何と言っても用例から学ぶことが一番多いので重要なチェックポイントと言えるでしょう。

句の用例だけでなく文の用例が多いのが望ましいですね。

(4)収録語彙数に惑わされない!

語彙数は多いに越したことはありませんが,そのために他の情報が犠牲になっているのは困ります。

例えば,リーダーズ英和辞典はその語彙数でよく知られていますが,これ1冊だけで済ますのは無理があります。

あくまでも他の辞書との併用で効果を発揮すると思います。

要はバランスの問題です。

また,あるときは割り切りの問題にもなります。

つまり,用例や語法が豊富な学習英和辞典を持っている場合は,思い切って語彙数を最優先して選択するのもひとつの判断基準と言えるかもしれません。

(5)イメージで理解できる工夫をしているか?

イラスト・図・表などを駆使して視覚的に理解しやすいような工夫も学習者には大いに助かります。

例えば,前置詞の意味を全て訳語で覚えるのは不可能でしょう。

それよりも,各前置詞の基本的な意味をイラストで示してイメージで理解できるようにしてある方が結局は応用に結びつきます。

特に,学習英和辞典にはこの種の工夫が望まれます。

(6)新語・略語を積極的に取り入れているか?

特にコンピュータ・インターネット用語などにおいて顕著な差が見られます。

この意味でも「辞書は新しい方がよい」と言えます。

(7)用例がネイティブのチェックを受けているものであるか?

最近ではほとんどの辞書がネイティブのチェックを受けるようになっているようです。

校閲者あるいはインフォーマントとしてネイティブの名前があれば大丈夫です。

理想的には複数の人の名がある方が安心できます。

(8)日頃気になっている単語・表現・訳語・語法などがどのように扱われているか?

これをチェックするためには学習過程で出てきた問題点を日頃から蓄積しておく必要があります。

新しい辞書が出る度にチェックするように心掛けておくとそのうちに自分好みの辞書にめぐり合える可能性が高くなります。

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