go hiking to Kusasenri は不自然か否か?

      2016/06/13

この記事は、別記事「教科書にもミスはある!」において問題提起した内容に関する補足記事です。

教科書にもミスはある!

「go hiking to Kusasenri は不自然ではないか?」という疑問を、出版社である開隆堂の編集部に問い合わせをしました。

担当者がおそらく責任執筆者であろうと思われるネイティブに連絡を取り確かめ電話で回答をくれました。

その結果、私は単純なミスだろうと思っていたのですが、どうやら本気で<go hiking to Kusasenri>は正しいと考えているようだと分かりました。

草千里

草千里の代表的な風景

しかし、それでも私は、

go hiking to Kusasenri は不自然

としか言いようがありません。

念のために申し上げますと、<go hiking to ...>が間違っていると言っているのではありません。

あくまでも、<go hiking to Kusasenri>が不自然だと主張しているのです。

まず、状況を説明しておきます。

be going to や will を使った文を書く練習問題です。

1.夏休みの予定を書く ※内容は想像でもOK

2.訪れる場所・人の例として、my uncle in Kumamoto がある

3.することの例として、go cycling around Mt. Aso と go hiking to Kusasenri がある。

開隆堂サンシャイン2年編集担当者からの回答の詳細を記します。

go hiking to Kusasenri の to は,in または on の誤りではないか

私は編集部担当者とは電話で2回話をしました。

この担当者は、平均的な公立の教師よりもはるかに英語力があるとすぐに分かるほど、ポイントの理解が速やかでした。今の時代、こういう実力のある人が多いはずなのに教育現場には少ないのはなぜでしょう?

担当者は、ネイティブ執筆者と複数回メールでやりとりをしてくれたようです。

なお、詳しいことは分からないのですが、1回目と2回目の問い合わせでそれぞれ別のネイティブ執筆者とやりとりしたそうです。

私が2回目の電話の際に新たな質問をしたからかも知れません。

それらのメールでのやりとりを後から、ワードにまとめて送ってくれました。

ご自分の所やネイティブのメールの一部はおそらく英文で書いたのを翻訳したのであろうと推測します。

このやりとりを引用する形式で、担当者とネイティブ執筆者とのやりとりを記していきます。

必要に応じて、私の注釈やコメントが入ります。

私の質問は、

1.go hiking to Kusasenri は不自然なので、 to は,in または on の誤りではないか?

2.草千里に対しては、in か on のどちらの方をネイティブは好むだろうか?

というものでした。

to だと、例えば、叔父の家から草千里までハイキングすることになり不自然であると理由を補足しました。

次から担当者とネイティブ執筆者とのやりとりです。

※担当者の発言部分をグレー背景で表示し、ネイティブの回答をサーモンピンク背景で表示します。

編集部担当者

★質問:p.23, Word Box 「すること」の欄の,「go hiking to Kusasenri」について,

go hiking to Kusasenri の to は,in または on の誤りではないかとの質問です。

一般に,go fishing to the river の to は誤りで,go fishing in the river が正しいとよく指摘されます。

1.go hiking to Kusasenri についても to は×で,in または on がということになりますか。

なお,Kusasenri はご存じのとおり,熊本県の阿蘇山のカルデラ内にある広大な草原です。

この「広い草原の中(上)を hike しに行く」のであれば,

go hiking on Kusasenri または go hiking in Kusasenri とするのが自然なように思われます。

ネイティブ執筆者の回答

Correct.

「草原の中(上)を hike しに行く」なら go hiking in (on) Kusasenri になります。

I am unable to answer this question very well, because I don’t have a clear understanding of what exactly 草千里 is (I understand it is a plain within the caldera, but I don’t understand it enough to know if it should be “in” or “on”).

※私のコメント:
ここ重要です。ネイティブといえども、いやネイティブだからこそ、その場所がどのようなところなのか具体的なイメージがつかめないと、前置詞の選択に悩むのです。

下記の後半部分は微妙なニュアンスの差を理解するのに役に立ちます。

If it is basically considered a general place name (i.e., a place one walks *through*), then it will use “in”—e.g., “go walking in Shitamachi”/ “go hiking in the Rockies”.

If instead it is considered something which one walks *atop*, then it will take “on”—e.g., “go hiking on Mt. Fuji”/”go hiking on the Appalachian Trail”.

Since I do not know enough about it, I do not know whether people are considered to walk “through” it or “atop” it.

 

しかし,状況としては少々不自然かもしれませんが,「Kusasenri に向かって hike する」のであれば,go hiking to Kusasenri も可能のように思います。いかがでしょうか。

※「文法的には正しい」ということを確認している質問です。

まさに、that’s exactly what it means (「Kusasenri に向かって hike する」).

Checking on the web, I see that there is a bus from Aso station to Kusasenri.  So, the person didn’t take the bus, he walked instead, heading to Kusasenri.

※これが私には不思議なのです。

バスには乗らずに、あえて草千里を目指して歩くことを選んだ、というのです。

後から詳細に説明します。

toを選ぶかin/onを選ぶかは、英語として「どちらが自然か」ではなく、話し手は何を言いたいのかによりますね。

※その通りです。to と on/in ではハイキングをする場所が異なります。

「草千里に向かってhikingした」なら「to」以外ありません。

※まったくその通りです。しかし、それが不自然なのです。

 

2.Kusasenri のような広い草原の場合,go hiking in [on] Kusasenriの前置詞には in と on どちらが適切でしょうか。

Kusasenri のような広い草原は「空間」ととらえるか,「平面」ととらえるかによって違うのかと思いますが,どちらが一般的でしょうか。

※これは私がネイティブは草千里のような場所に対してどちらの前置詞を好むのかを知りたくて尋ねてもらいました。

ある場所を三次元の世界(空間)としてとらえるのか、それとも二次元の世界(平面)としてとらえるのか、という問題です。

As I mentioned above, it depends on how it is viewed—is it something that one walks through or walks atop?  You need to ask someone who knows the area better.

A native speaker who is not familiar with the area might use “in” or “on”, although my guess is that we would probably use “in” unless we have a specific feeling that “on” would be better.

※ここ(この文の後半部分)もネイティブの感覚を知るのに役に立ちます。

Again, it’s not clear to anyone who is not familiar with the area.  If the local people consider it something one walks “atop” then it needs to be “on,” but there is no way for people unfamiliar with the area to know this.  If a native speaker doesn’t know which is correct (walk through = in, walk atop = on) then he will probably use “in”.

 

なお,Kusasenri (草千里)は,Kusasenri Plain/Plateau/Prairie/Meadows などと表されることもあり,Meadowsの場合は on が使われ,他は in が使われることが多いようです。

※この質問は、担当者が自発的に尋ねたものです。

Personally, I would probably say:

go hiking on the Kusasenri plain (「in」も一応あり得るが意味が変わる:ここは「in」にしたら「within」の代わりに使っている。つまり「(極めて広い)草千里平原の中(草千里平原の範囲内)の *一部のみ* 歩いた」になる、「on」は単なる「草千里平原の中を歩いた」)

go hiking on the Kusasenri plateau(「in」も一応あり得るが意味が変わる(コメントは同上))

go hiking on the Kusasenri prairie(「in」も一応あり得るが意味が変わる(コメントは同上))

go hiking in the Kusasenri meadows(meadowsは草がぼうぼうというイメージがあるので、やはりその「中」を歩く。草千里自体は「草ぼうぼう」ではないらしいですが、ともかくmeadowsを使う限り、onが使いづらい)

要するに、

文法的には、<go hiking to Kusasenri>も<go hiking in[on] Kusasenri>も正しい。

しかし、

前者は「草千里までハイキングをする」のに対し、後者は「草千里の中をハイキングする」ことになる。この点が異なります。

ということが再確認できただけです。

ネイティブの回答は、担当者と私との間で最初に質問をした段階で確認できていた内容でしたので、大きな進展はありません。

私が不自然だと思っていることがネイティブの執筆者には通じなかったのは残念でもあり不思議でもありましたが、ネイティブ執筆者が書いた内容からその理由が垣間見れるような気がします。

情報不足が原因

教科書の前提条件を認識していないことと地理的な情報を持ち合わせていないことが原因ではないかと考えます。

前者は、上述した

1.夏休みの予定を書く ※内容は想像でもOK

2.訪れる場所・人の例として、my uncle in Kumamoto がある

3.することの例として、、、、 go hiking to Kusasenri がある。

後者は本人も回答の中で「ハッキリとは分からないので確かな回答はできない。十分には知らない。詳しい人に尋ねた方がよい。」と認めています。

最初の回答があった時に、

<go hiking to Kusasenri>を不思議だと思わないネイティブの感覚に疑問を感じ、

ネイティブの情報不足を疑い、

担当者に「草千里がどういうところであるかやその位置関係を知らないのではないですか?」と尋ねました。

担当者の回答は、「写真などを見て分かってもらっています。」とのことだったのですが、本人の言葉からもやはり実際にはあまり分かっていないことが読み取れます。

なぜ go hiking to Kusasenri は不自然なのか?

私が不自然と感じる理由を整理し説明します。

1.夏休みで熊本の叔父のところに遊びに行く、という前提

2.go hiking と「草千里」という情報でどういうハイキングを普通は想像するかという前提

担当者と私との間では概ね共有できているこれらの前提が、ネイティブには共有できていないのでないかと思われます。

順に説明します。

★訪れる叔父の家は熊本のどこかです。

★どこからハイキングを開始するかは記載されていません。

★草千里は阿蘇市にあります。

★草千里の中には周遊コースが複数整備されています。つまり、ハイキングできるようになっています。例えば、烏帽子岳周遊コースは記憶が正しければ1回程度のコーヒータイムを入れて2時間ほどのハイキングコースです。

go hiking to Kusasenri が正しいとすると、

草千里に一番近いと考えられる叔父の家は阿蘇市ですが、それでも市の中心部から草千里の入り口までグーグルマップで調べると直線距離で10kmほどあります。

歩いて行けば当然それ以上になります。

しかも、街中から標高差500m以上あるはずです。

叔父の家が阿蘇市の中心部にあるとして、そこから草千里まで標高差のある10km以上をハイキングとはかなりハードですよね。

しかも、草千里に着いたらハイキングは終わりです。

ハイキングコースが整備されている草千里の中を歩かずに帰るようです。

風光明媚な草千里の中を”あえて”ハイキングしないのだそうです。

悲しくないですか?

叔父の家が阿蘇市でなかったらどうなるのでしょう?

どの市であれ、とんでもない距離になります。

叔父の自宅からのハイキングは事実上考えられません。

ネイティブの発想では、

市外から阿蘇駅まで電車で移動して、ネイティブの人が指摘されているように「阿蘇駅からバスが出ている」が、それには”あえて”乗らずに、そこからハイキング開始、ということのようです。

もちろん、草千里の中をハイキングするのではなく草千里までのハイキングです。

そんな日本人はどれほどいるでしょうか。

私は山歩きを趣味としていますが、街中は歩きたくないです。

登山口まで車や電車で行って、そこから歩きます。

ほとんどの人がそうです。むしろそうでない人がいたとしても、それは例外でしょう。

そもそも、hiking というと、walking in the country をイメージしませんか。

普通のことを普通に考える、これが大切だと思います。

夏休みで熊本の叔父のところに遊びに行って、草千里にハイキングに行く

要するに前提条件となる情報はこれだけです。

ここからどういうハイキングを想像するのが普通であるかが問題です。

叔父の家がどこにあるにしても、普通の日本人なら、

草千里の入り口までバスか車で移動して、そこからハイキングコースを歩くのではないでしょうか。

何しろ、適度な距離と所要時間のハイキングコースが設けられているところですから。

「草千里にハイキングに行こう」と誘って、

阿蘇駅からバスがあるのに利用せずに、あえてそこから街中を歩き始め目的地は草千里(の入り口)、中は歩かない

なんてハイキングをする人いるでしょうか?

そんなハイキングを前提にする熊本人がいるとはとうてい考えられません。(どこにでも例外はあることまでは否定しませんが。)

ところが、ネイティブの執筆者は、

阿蘇駅から草千里までハイキングすることに何の不自然さも感じていない

のです。

概して、欧米の人ほど日本人は歩くのは好みません。彼らは本当に長距離歩くことを厭わない人が多いようです。

情報不足と伴に、そういう背景がネイティブの人の解釈にも影響を与えているのかも知れません。

まとめ

以上のことから、私には、やはりどうしても、

「草千里に向かってハイキングする」のは不自然

としか言いようがないと考えます。

中学生の教科書ということを考えれば、go hiking *in* Kusasenri にすれば議論を呼ぶことはなくなります。

なぜわざわざ<go hiking to Kusasenri>を選んだのでしょう?

想像ですが、

日本人執筆者のどなたかが特に深い理由もなく、生徒が使う表現の候補として<go hiking to Kusasenri>を記載した。

英語チェックするネイティブが、文法的には正しいが故に諸々の情報不足もあって、見逃してしまった。

というところではないでしょうか。

ここまで私の考えを述べさせてもらいましたが、みなさんはどう思われますか?

どうしても「~に向かってハイキングをする」という表現を意図的に使いたいなら、あるいは”あえて”中学生に紹介したいなら、議論を招く心配のない表現、例えば、

「go hiking to Nabegataki Falls」

などにすればよいでしょう。

滝まで10kmであろうが20kmもあろうが、その滝までハイキングすることに疑問の余地は決して生じないからです。

教科書の英文はこういうところまで神経を使ってもらいたいものです。

(ちなみに、Nabegataki Falls は「鍋ヶ滝」のことであり、全国区になった熊本で有名な滝です。)

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補 足

担当者との間では「不自然」という共通認識が得られたと思うので、

編集部のみなさんでも不自然であるとの一致が見られたら、生徒に無用の混乱を与えないように来年の教科書では<go hiking in Kusasenri>に修正していただけると有り難いのですが、

と伝えました。

そうすると、

「修正というのはそれほど簡単にはできない」のだそうです。

音声教材なども含めて、他の教材関係書なども同時に修正しないといけないので大変なことになるそうです。

なるほど、と同情はします。

「文法的には正しい」を錦の御旗としてこのまま乗り切るのも仕方ないのかも知れません。

まあ、結果は来春になれば分かります。楽しみにしておきます。

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