教科書にもミスはある!
2016/06/12
こと科目としての英語に関しては、中学用の教科書であれ高校生用の教科書であれ、たまには「間違い(ミス)」はあるものです。私の経験でも、30年以上前から見られます。特に、教科書が新しくなった初年度は要注意です。
今年(2016年)がその初年度なのでなんとなく気になっていたら、生徒や勉強不足の教師がするなら分かるけれども教科書がこんな間違いをするのか、というミスがありました。
もちろん、正確には教科書がしたのではなく教科書に関わった人たちがしたミスなのですが。
一般的には、ミスには単純なミス(タイポ=typo[graphical error])から語法・文法的なミスまでさまざまです。
中学の英語の教科書に関して、簡易的な辞書の役割をする巻末の「単語と熟語」に書いている訳語が本文の該当ページで使われている意味とは異なる、あるいは適正とは言えないものが紹介されている場合が時にあるのですが、特にある特定の教科書において目立って多かった時があります。
あるいは、be surprised at ... のようなbe動詞を使った熟語において、be動詞なしで、surprised at ... と紹介している教科書がありました。
be動詞を使った慣用句はすべてそうでしたから、その教科書の編集方針にしたがって表記したものでしょうが、その目的も理解できませんでしたし非常に違和感が覚えました。
その教科書だけの問題でした。
私の授業においては、be動詞を付けて覚えるようにと指導しました。
しかし、これらはまだかわいいものです。
これが誤訳や語法&文法上のミスとなると笑って済まされません。
何しろ1点を争う受験生の合否に影響するかもしれませんから。
あるいは、ミスに気が付かなかった教師・講師が間違ったまま教えてしまう、つまり、教師のミスを誘発する可能性もありますから。
(下記の記事中の「その6」を参照)
go ...ing に付く前置詞は<to>?
論より証拠です。開隆堂「Sunshine English Course 2」の23ページにあります。
教科書に物申すのには勇気が要りますので、謙虚に始めたいと思います。(^^)
問題提起:go hiking to Kusasenri は正しいのか?
語法上は、
<go ...ing>の次に来る前置詞は、方向を表す前置詞<to>ではなく、場所・位置関係を表す前置詞(in, at, on など)が来る
がルールです。
<to>をもってくるのは特に日本人に多いミスであり、テストにもよく出題されるポイントにもなっていますが、それは「~に(へ)ハイキングに行く」にあるように、「~に」や「~へ」に引きずられて<go to ...>を連想する結果だと思われます。
英語の表現は、
<go>と結びつく前置詞ではなく、<...ing>の動詞と結びつく前置詞を必要とする
のです。
したがって、普通は<to>がくることはありません。
下記のように<to>以外の前置詞との組み合わせになります。
● go swimming in the river[lake, sea] / at the beach
● go skiing at Daisen / in Hokkaido
● go skating on the lake
● go shopping at a mall / a supermarket / a nearby shop
● go hiking in the mountains / the hills / the woods
● go jogging in the park / around the park
● go fishing in the lake / the river
● go camping in the woods
● go boating on a lake / a river
go hiking to Kusasenri は文法的には正しいが不自然!?
上記のことから、
このルールに従えば、「草千里にハイキングに行く」という意味で、<go hiking to Kusasenri>は間違いということになります。
しかし、実際は、文法的には正しいです。
<to>がきているから間違いという訳ではありません。
ここを誤解しないでください。
もう一度ルールを思い出してみましょう。
<go>と結びつく前置詞ではなく、<...ing>の動詞と結びつく前置詞を必要とする
例を挙げると、
fish to the river ⇒ fish in the river
のように、<go ...ing>で使われる多くの動詞はたまたま<to>ではなく別の前置詞を必要とするのです。
ところが、一部の動詞は<to>をとることもあるので話がややこしくなります。
例えば、hike は、<hike in the woods>も正しいですし、<hike to the waterfall>も正しい表現なのです。
前者は、「森の中をハイキングする」という意味で、後者は、「滝へハイキングに行く」という意味を表します。
同様に、<walk to ...>も正しいです。
ということは、
<go hiking to ...>や<go walking to ...>も実は正しい用法です。
しかし、それでも
<go hiking to Kusasenri>は不自然
だと私は考えます。
根本的な原因は、前置詞<to>にあるというよりも、むしろ<to>と「草千里」の組み合わせにあります。
もし、万が一、これが正しいとしたら、どういうハイキングをすることになるのだろうかと考えてみました。
自宅から草千里までがハイキングのコース、つまり、「自宅~草千里」間の道中をハイキングするというイメージでしょうか。
極端な話、目の前に広大な草千里の草原が広がっていて周遊コースも整備されているのに、草千里の中はハイキングしないで入り口から引き返す、ということになります。
私には、「草千里」に<to>はどう考えても不自然としか思えません。
「そんなハイキングを考えたはずがない。きっと、単純なミスだ。<in>のところに<to>を入れてしまっただけだろう。」
と思って、出版社に確認を取りました。
この件に関して、出版社の編集部担当者と話し合いが持てました。長くなるので別記事にしました。
go ...ing で使える動詞は?
ついでながら、<...ing>のところにおける動詞について理解しておきましょう。
主に趣味・スポーツ・娯楽・気晴らしと関係がある動詞がきて、ある程度は慣用的な組み合わせが決まっていると言えます。
ただ、少し気をつけないといけないことがあるようです。
以前は、不可とされていた
★ go playing+球技
★ go walking
を見かけることがあります。
例えば、両方とも「ラ・サール」で使用している教材の中で見たことがあります。
語法の変化には保守的な教科書に出てきている点が気になっています。
後者は、「ウォーキングに行く」のようにスポーツとしての<walking>が浸透してきて一般化したのかなと推測でき違和感もないのですが、前者にはまだ個人的には抵抗があります。
もっとも、前者のタイプで私が確認したのは<go playing golf>だけなのですが。
まとめ
大勢の目に触れている教科書といえども、「完璧」というのは難しいのでしょう。
辞書にもミスがあるくらいですから仕方ないのでしょうね。
大切なことは、教科書に載っていることだからといって絶対視しないことだと思います。
疑問があれば調べる、問い合わせるという基本姿勢が教師・講師には求められるでしょう。
もっとも、問い合わせまでしなくても、1年後に結果が分かる場合もあります。
今までの例を見ていると、初年度に誰かから指摘され次の年にはそっと修正されているものです。(追記:必ずしも、修正されるとは限らないと出版社の編集担当者から教えられました。)
私自身も高校の1年の教科書にあった<keep ...ingの使い方>に関して問い合わせをしたことがありますが、丁寧な礼状が来て次の年には修正されていました。
ぜひお読み下さい
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