TOEIC(L&R)で900点越え獲得者の真の英語力は?

      2018/07/08

 

「TOEIC 900点越え」実績者の英文解釈能力の実例

990点を満点とするTOEIC「Listening & Reading」タイプのテストで900点以上の高得点や満点の成績をおさめた人の英語力に対して、本当に日本社会が与えているような高い評価をしてよいのか疑問を呈する専門家の声がよく聞こえてくるようになりました。

2020年度から導入される新しい大学入試制度に伴なう「英語4技能テスト」が脚光を浴びるようになって特にそういう傾向が強いように感じています。

【参考記事の例】

◎専門家が直言「TOEICが日本を滅ぼす」
http://president.jp/articles/-/24954

◎TOEICの満点は、990点でなく1390点
https://toyokeizai.net/articles/-/11739

つい先日、短期間でTOEICの得点を2倍以上にして900点以上を獲得したと自称するある日本人の英文解釈能力を垣間見ることができるブログ記事をたまたま見つけました。

それは下記の記事を書くためにネット検索をしていたときのことです。

「インスタ映え」は英語でどう表現する?

インスタグラム上で作り上げた”リア充”イメージを維持するために1万ドルの借金をし結局は無一文になってしまったアメリカ在住の26歳の女性の話です。

オリジンルの英文記事に関する情報:

おそらく、New York Post の下記の記事が元なのでしょう。
https://nypost.com/2018/03/03/my-quest-for-instagram-stardom-left-me-in-financial-ruin/

ブログ記事の書き手は下記の記事を元にしているようです。(New York Post のものとは異なったところがあります)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-5458315/Woman-26-says-debt-spiraled-trying-social-media-star.html

ブログ名と記事の作者について

私個人は、英語教師や講師の能力不足に関しては---自戒すると同時に---厳しい立場をとっていますが、これから紹介するブログ記事の作者は英語教師や英語の専門家ではないようなので、個人を批判するような意図はまったくありません。

単に一例として紹介させていただくだけです。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

したがって、不必要なブログ名や作者名は伏せます。

また、この記事が特定されにくいように最小限(特に大きな問題点)の引用にとどめながら解説したいと思います。

大切なことは、

ブログに記載されている本人のプロフィールによれば、TOEICの得点を短期間で2倍前後の「900点越え」を取得した実績を有する英語力の持ち主であるという点です。

これが真実だとして、この点にだけ興味を持って下記の問題点を一緒に考えてみてください。

英文解釈上の問題点

特に大きな問題点を含んでいる文だけを引用しながら解説します。(正直なところ、細かいミスも含めるとかなり多くの誤解釈や誤訳があります。)

この方のブログ記事では、各英文に対して「語注」と「訳」を提示しています。

「訳」と書いている以上は、要旨とか要約ではなく、「英文解釈をした結果このような翻訳になります」という理解でよいと思います。

それでは具体的に見ていきましょう。


 

A woman who tried to make her life Instagram worthy went flat-broke in the process.
インスタグラム生活を価値あるものにしようとした女性は、無一文になるという結果に終わってしまった。

★her life Instagram を「インスタグラム生活」と理解したようです。

★make+her life+Instagram worthy が正しい解釈であり、<make +O+C>の第5文型です。

★Instagram worthy = Instragram-worthy 「インスタグラムで共有するに値する」という意味です。

要するに、インスタグラムに投稿してフォロワーの注目を浴びたくて、実際の生活とはかけ離れた”リア充”感を過度に演出していく中で一文無しになってしまったという内容です。


 

The only problem was she was going broke trying to keep up appearances to match on social media with brunches, new outfits, and jet setting, all to impress her followers.
唯一の問題は彼女が破産したことだった。彼女はソーシャルメディア上のフォロワーの尊敬をや関心を集めるために、ブランチしたり、新しい洋服を買ったり、飛行機で各地を飛び回ったりすることに全てのお金を費やしてしまったのだ。

★was going broke と進行形ですからまだ破産はしていません。破産しそうな状況です。(←これは些細なミスです)

★keep up appearances がまったく訳の中に直接的にも間接的にも表現されていません。(to match は元の英文にはありません。本人が加筆したのでしょうか?)

keep up appearances は「体裁を繕う, 体面を保つ」という意味です。つまり、「演出した”リア充”感を維持しようとして破産しそうな状況になっている」ことを言っているわけです。

★「~することに全てのお金を費やしてしまった」の件りは『訳』としては不正確でしょうね。


 

Her internship only provided a travel stipend, so she worked a part time retail job to supplement her income that went entirely to her quest for photo lifestyle perfection.
インターンシップ先が彼女に払ってくれたのは旅行費だけだった。そのため彼女は小売業のアルバイトを始めたのだ。全ては完璧な人生のような写真を撮るための費用を蓄えるために。

★この internship は「インターン生(実習生/研修医)の地位あるいは身分」を表します。彼女が具体的に何の”実習生”だったのかは分かりません。

★a travel stipend は「交通費」でしょうね。「旅行費」だと、「飛行機で各地を飛び回ったりする」費用を出してくれたと誤解させてしまうでしょうね。

まだインターンなので給料は発生していなくて交通費だけが支給されている身分なのでしょう。

★a part time retail job は「小売業のアルバイト」というよりは「店員のアルバイト」ではないでしょうか。

★supplement her income は「費用を蓄える」ではなく「収入を補う→生活費の足しにする」

難しい語彙ではないはずなのですが、このような誤解が理解できません。

★「完璧な人生のような写真」⇨これが大問題でしょうね。まず日本語として意味をなすでしょうか。

「完璧な+人生のような写真」だとしたら、「人生のような写真」が意味不明です。「完璧な人生+のような写真」だとしたら、「完璧な人生」は意味をなしますが、「~のような写真」とはどういう意味なのか疑問が生じます。そもそも、<lifestyle>とは「生活様式/ 暮らしぶり/ライフスタイル」という意味です。

<photo lifestyle perfection>というのは、おそらく、直訳的に表現すると「写真で表したライフスタイルの完璧さ」であり、補足的に説明すると「インスタグラムに投稿した写真で作り上げた誰もが羨む”リア充”感満載のライフスタイル」ということではないでしょうか。

<her quest for>は「~を追い求めていること」を表し、 <her income that went entirely to her quest>は「インスタグラム上でそういう生活を追い求めることにもっぱらつぎ込まれる収入」ということになります。

【試訳】
見習いという身分なので交通費しか支給されないために、生活費の足しにするべく店員のアルバイトをしたが、その収入はもっぱらインスタ写真で完璧なライフスタイルを追い求めるためにつぎ込まれたのだ。


 

She says that despite moving back to Miami and getting a full-time job as a publicist Calveiro was $10,000 in debt trying to keep up on Instagram.
彼女はマイアミに戻り、Calveiroの宣伝員のフルタイムの仕事 を行っていたにも関わらず、 1万ドルの借金があった。全てInstagramのためだった。

★「Calveiroの宣伝員」が大問題です。この方は文の構造が理解できていません。

本当は、<...as a publicist / Calveiro was $10,000 in debt ...>の赤色の部分で切れています。<Calveiro>というのはこの主人公の名前です。つまり、<despite moving back to Miami and getting a full-time job as a publicist>が文頭に置かれている修飾語句で、<Calveiro was>が<主語(S)+動詞(V)>の関係なのです。しかし、この方の解釈では、<Calveiro>がお店かブランドの名前であり、この女性はその宣伝員となっています。そして、<was>の主語が行方不明になっています。

「TOEIC 900点越え」した人が、主語さえも捉えられていないことに大変驚きました。このようなTOEICでよいのだろうか、と本当に疑問を持ちました。


 

'I was living above my means,' she said.
「私は自分の世界に住んでいなかったわ」と彼女は言う。

★どういう意味なのでしょうか。どこをどう解釈したらこういう訳になるのか、まったくもって理解できません。この<means>は、「収入」という意味です。

★live above one's means:収入以上の生活(暮らし)をする/分不相応な生活(暮らし)をする


 

According to Fashionista, you would need to spend about $31,400 a year to 'to maintain the standards of physical beauty represented daily in our Instagram feeds.'
メディア、ファッショニスタ によると、 インスタグラム上に投稿されている写真の美しさを保つためには、毎年31,400ドルが必要になるそうだ。

★英文にタイポがあります。<to "to maintain...>は<"to maintain ...>の入力ミスです。

★ 「写真の美しさを保つ」が大問題です。

<physical beauty>というのは、「肉体美、身体美;容姿の美しさ、外見的な美しさ」ほどの意味です。この文脈では「外見的な美」くらいでしょうか。そして<maintain>するのは<the standards of ...>です。


 

She got the much needed wake-up call at the end of 2016 when she landed a PR job in Manhattan.
2016年の終わりに、PRの仕事のためマンハッタンを訪れた時、彼女は目を覚ますようにという電話が必要だった。

★文意が不自然この上ない状況になっていることに気が付いていないことが大問題です。

★「PRの仕事のためマンハッタンを訪れた」ではなく、「マンハッタンで広告の仕事を手に入れた」という意味です。

★<got the much needed wake-up call>は、簡単に言うと「目が覚めた」ということです。

「モーニングコール」が比喩的に使われた例です。「大きな問題を抱えているのにその自覚がない人が何かがきっかけでハッと目が覚める」ことを表し、<when>以下がそのきっかけを表します。

<much needed>は<much-needed>と同じ意味で、「待ち望んでいた/本当に必要な」という意味です。

【試訳】
2016年の末にマンハッタンで広告の仕事を手に入れたのが切っ掛けとなって彼女はようやく目が覚めた。

おわり

この英文読解力をどう判断しますか?

単に900点をわずかに超えただけの人と満点の990点を取った人とでは実力にかなりな違いはあるとは思います。

しかしながら、何かしらのテストにおいて満点でなくても「90%」以上を得点すれば高い評価を受けて当然なのではないでしょうか。

そういう観点からすると、

かなりな英語力の持ち主なのだろうなと考えてしまいます。

ところが実際は、

この方の英語力は少なくともビジネス英語の世界ではほとんど役に立たないでしょう。それどころか”危険”でさえあるかもしれません。

この方が海外からのメールや書類を翻訳して営業部に回したとしたらどうなるでしょう。あるいは、海外に発信したとしたらどうでしょう。

厳しいようですが、会社に大変な損害をもたらす可能性が大きいと言わざるをえません。

TOEIC とはいったいどういうテストなのでしょう?

私自身は TOEICを受験したことはありません。

学生や社会人の受験希望者に助言をできる程度に、ことあるごとに情報収集はしたことはあります。

その程度にしか TOEIC には触れていません。

そこで教えていただきたいのですが、

上で紹介した方お一人で判断してはいけないとは思いますが、それにしても高校で学習する一般的な文法力や構文力がなくても【TOEIC 900点越え】が本当に可能なものなのでしょうか。

語彙力にも疑問があります。

読解力(文脈力)にいたってはさらに大いな疑問が湧きます。

にわかには信じられない状況です。

一例と言えども、こういう状況を知ると TOEIC に否定的な人の見解に頷きたくなります。

ぜひお読み下さい

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